認知症
「もしも、親や身近な人、あるいは自分自身が認知症になってしまったらどうしよう…」そんな不安を抱いたことはありませんか。 認知症とは?症状が出たらどうすればいい?家族や周囲は、本人とどう接したらいいの? 困ったときに気軽に聞ける相談先は?
認知症とは?
認知症とは、脳やからだの病気などが原因で脳が病的に侵され、もの忘れ(記憶障害)や判断力の低下などが起こる病気です。 認知症の多くはアルツハイマー型認知症か脳血管性認知症(のうけっかんせいにんちしょう)かのどちらかです。
どんな症状がでるの?
認知症の症状には、もの忘れなどの記憶障害や判断力の低下、見当識障害(けんとうしきしょうがい)いまがいつなのか、 どこにいるのかがわからなくなる状態)などの認知症で必ずみられる中心症状と、妄想や幻覚、不安、徘徊などの必ずしもみられるとは限らない周辺症状があります。 人は歳をとると誰でももの忘れをしますが、老化によるもの忘れは体験の一部を忘れるだけなのに対して、認知症によるもの忘れでは体験の全部を忘れるなど、 大きな違いがあります。また、老化によるもの忘れは日常生活に支障がなく、ゆっくり進むのに対して、認知症のもの忘れは日常生活に支障を来し、比較的速く進みます。
早期発見の目安!!
物忘れがひどい
- □ 今切ったばかりなのに、電話の相手の名前を忘れる
- □ 同じことを何度も言う、問う、する
- □ しまい忘れ、置き忘れが増え、いつも探し物をしている
- □ 財布、通帳、衣類などを盗まれたと人を疑う
判断・理解力がおとろえる
- □ 料理、片付け、計算、運転などのミスが多くなった
- □ 新しいことが覚えられない
- □ 話のつじつまが合わない
- □ テレビ番組の内容が理解できなくなった
時間・場所がわからない
- □ 約束の日時や場所を間違えるようになった
- □ 慣れた道でも迷うことがある
人柄が変わる
- □ ささいなことで怒りっぽくなった
- □ まわりへの気遣いがなくなり頑固になった
- □ 自分の失敗を人のせいにする
- □ 「この頃様子がおかしい」と周囲から言われた
不安感が強い
- □ ひとりになると怖がったり寂しがったりする
- □ 外出時、持ち物を何度も確かめる
- □ 「頭が変になった」と本人が訴える
意欲がなくなる
- □ 下着を替えず、身だしなみを構わなくなった
- □ 趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなった
- □ ふさぎ込んで何をするのもおっくうがり嫌がる
予防方法は?発症したら治らない?
認知症の大部分を占めるアルツハイマー型や脳血管性認知症は、生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症など)との関連があるとされています。 例えば、野菜・果物・魚介類の豊富な食事を心掛けたり、定期的な運動習慣を身に付けたりと、普段からの生活管理が認知症の予防につながることが分かってきました。
また、症状が軽い段階のうちに認知症であることに気づき、適切な治療が受けられれば、薬で認知症の進行を遅らせたり、場合によっては症状を改善したりすることもできます。 早期診断と早期治療によって、高い治療効果が期待できるのです。
認知症の早期診断・早期治療につなげるために、自分自身や家族・同僚、友人など周りの人について「もしかして認知症では」と思われる症状(詳しくは後述)に気づいたら、 一人で悩まず専門家などに相談しましょう。主な相談先は次のとおりです。
主な相談先
- ・受診に適した診療科 神経内科、精神科、内科
- ・かかりつけの医師
- ・医療機関の「もの忘れ外来」
- ・地域包括支援センター
下記のウェブサイトから検索できます。
e-65.net(イー・ローゴネット)「認知症・地域支援マップ」 - ・認知症の電話相談(公益社団法人 認知症の人と家族の会)
電話番号 0120-294-456
受付時間:午前10時~午後3時(月~金 ※祝日除く)
※携帯電話・PHSの場合は075-811-8418(通話有料) - ・介護支え合い電話相談(社会福祉法人浴風会)
電話番号 03-5941-1038
受付時間:午前10時~午後3時(月~木 ※祝日・年末年始除く)
家族や周囲はどうすればいいの?
認知症になる可能性は誰にでもあります。私たちと同様、認知症を患った方々の心情も様々です。また、「認知症の本人は自覚がない」という考えも大きな間違いであり、 最初に症状に気づき、誰より一番不安になって苦しむのは本人なのです。
認知症の人は理解力が落ちているものの、感情面はとても繊細です。あたたかく見守り適切な援助を受ければ、自分でやれることも増えていくでしょう。 認知症という病気を理解して、さりげなく自然で優しいサポートを心がけましょう。
【参考】「認知症」の人のために家族が出来る10ヵ条
- 1.見逃すな「あれ、何かおかしい?」は、大事なサイン。
- 認知症の始まりは、ちょっとしたもの忘れであることが多いもの。あれっ、もしかして?と気づくことができるのは、身近な家族だからこそです。
- 2.早めに受診を。治る認知症もある。
- 認知症が疑われたら、まず専門医に受診すること。認知症に似た病気や、早く治療すれば治る認知症もあるのです。また、適切な治療や介護を受けるには、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症などをきちんと診断してもらうのは不可欠です。
- 3.知は力。認知症の正しい知識を身につけよう。
- 特徴をよく知って、快適に生活できるよう、その後の家族の生活や介護計画づくりに役立てましょう。
- 4.介護保険など、サービスを積極的に利用しよう。
- 家族だけで認知症の人を介護することはできません。サービスは「家族の息抜き」だけでなく、本人がプロの介護を受けたり社会に接したりする大事な機会です。
- 5.サービスの質を見分ける目を持とう。
- 介護保険サービスは、利用者や家族が選択できるのが利点。質の高いサービスを選択する目が必要です。
- 6.経験者は知恵の宝庫。いつでも気軽に相談を。
- 介護経験者が培ってきた知識や経験は、社会資源の一つ。一人で抱え込まずに経験者に相談し、共感し合い、情報を交換することが、大きな支えとなります。
- 7.今できることを知り、それを大切に。
- 知的機能が低下し、進行していくのが多くの認知症です。しかし、すべてが失われたわけではありません。失われた能力の回復を求めるより、残された能力を大切にしましょう。
- 8.恥じず、隠さず、ネットワークを広げよう。
- 公的な相談機関や私的なつながり、地域社会、インターネットなどのさまざまな情報を上手に使い、介護家族の思いを訴えていきましょう。
- 9.自分も大切に、介護以外の時間を持とう。
- 介護者にも自分の生活や生甲斐があるはず、「介護で自分の人生を犠牲にされた」と思わないように自分自身の時間を大切にしてください。介護者の気持ちの安定は、認知症の人にも伝わるのです。
- 10.往年のその人らしい日々を。
- その人らしい生活を続けられるよう、家族で話し合いましょう。