機能性ディスペプシア
1.機能性ディスペプシア(FD)とは
みぞおちの痛み、食後の膨満感などの上腹部症状があり、
内視鏡検査などで逆流性食道炎や胃・十二指腸潰瘍などの器質的疾患が無い例を
機能性ディスペプシア(FD :functional- dyspepsia)と呼びます。
潰瘍などの病気がないのに上腹部症状があるのは機能障害が関係しているのではと考えられ、
またディスペプシアは直訳すると消化不良ですが、上腹部症状という意味で捉えて、
機能性ディスペプシアという診断名が用いられています。
主な症状は「つらいと感じる食後のもたれ感」「食事開始後すぐに食べ物で胃が一杯になるように感じて、
それ以上食べられなくなる感じ(早期飽満感)」「みぞおちの痛み(心窩部痛;しんかぶつう)」
「みぞおちの焼ける感じ(心窩部灼熱感;しんかぶしゃくねつかん)」の4つです。
日本人の4人に1人は機能性ディスペプシアを持っているという調査結果もあり、決して珍しい病気ではなく、
誰もがかかる可能性のある病気です。
・機能性ディスペプシアの主な症状
この病気の概念は、近年になって新しく確立したものです。それまでは、「慢性胃炎」や「神経性胃炎」と診断されていました。
本来「胃炎」とは、胃の粘膜に炎症が起きている状態を表す言葉です。
ところが、胃炎があっても症状があるとは限らず、逆に症状があっても胃炎が認められないことも多々あります。
そこで、症状があっても異常がさまざまな検査でも認められない場合、胃に炎症があるなしにかかわらず
「機能性ディスペプシア」と呼ばれるようになりました。
2.原因
発症には、胃運動機能異常、粘膜の炎症、胃酸、内臓の知覚過敏(胃のみならず脳の知覚過敏)、
精神神経因子などか様々に関与していると議論され、発症機序の解明が懸命に進められています。
3.診断
辛いと感じる食後のもたれ感、早期飽満感、心窩部痛、心窩部灼熱感のうち一つ以上あり、
症状の原因となりそうな器質的疾患(胃内視鏡検査を含む)がないこと。6ヶ月以上前から症状があり、
3ヶ月間はこの診断基準を満たす。と定義されています。
日常臨床ではこのような厳密な診断基準に満たなくても上腹部症状を訴える例は機能性ディスペプシアに準じて、
症状を軽快・消失させる治療を行います。
4.治療
症状から定義されている疾患ですので、症状を改善させることが治療目標です。
様々の原因が複雑に関与して症状を起こしていると考えられていることから、治療は様々な薬剤の処方が試みられています。
- 消化管運動調節薬
- 酸分泌抑制薬
- 鎮痙薬
- 漢方製剤
- 抗不安薬
- 抗うつ薬
こうした薬剤が時には組み合わせて処方されています。
5.生活の中で心がけること
・出来るだけ決まった時間に食事をとるようにしましょう
食事の時間が不規則であったり、夜遅い時間、とくに就寝直前に食事をとったりすることは、
胃に過剰な負担をかけることになります。
・よく噛んでゆっくり食べましょう
口の中で食べ物をよく噛んで細かくすることによって、胃で消化しやすくなり、胃の負担が少なくなります。
・食事の量は原八分目にしましょう
食事の量をとり過ぎることは、胃に大きな負担をかけ、胃酸の過剰分泌を引き起こす原因となります。
・胃に負担のかかる食事をとりすぎないようにしましょう
甘いものや、トウガラシなどの刺激の強い香辛料、脂肪分の多い食事をとり過ぎることは、
胃もたれや胃酸の過剰分泌を引き起こす原因となります。
・食後には休息をとりましょう
食事のすぐ後に運動などをすると、胃のはたらきが弱まります。
・睡眠を十分にとり、ストレスや疲れをためないようにしましょう
胃腸は、精神的・肉体的なストレスの影響をとても受けやすい臓器です。
・適度な運動をしましょう
適度な運動は、消化管のはたらきを活発にします。また、運動することでストレス発散にもなります。
・アルコールのとり過ぎに注意しましょう
アルコールは、胃酸の分泌を増やすといわれています。
胃酸分泌は機能性ディスペプシアの主な原因のひとつですから、アルコールのとり過ぎには注意が必要です。
・禁煙を心がけましょう
喫煙は、胃の血流量を低下し、胃のはたらきを悪くします。